「兄活」での違法行為とは|事件が発覚するケースと逮捕の可能性
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いわゆる「パパ活」が社会的に問題視されるなかで、その派生形として登場したのが「兄活」です。女性が「兄」と呼べる程度の年上の男性が対象であるため、パパ活への抵抗感が強い女性でも気軽にお小遣いやお金を稼いだり食事などをおごってもらえたりするとして、若い年代の女性の間で人気が高まっています。
男性側は疑似的な恋愛を楽しみ、女性側は対価を得るという点で相互に利益があるように思えますが、男性・女性ともに犯罪のリスクがあることを理解しておかなければなりません。
本コラムではとくに男性側の視点で「兄活」が招く違法行為や逮捕の可能性について、ベリーベスト法律事務所 高松オフィスの弁護士が解説します。
1、「兄活」とは? パパ活との違い
そもそも「兄活」とはどういう意味なのでしょうか? 「パパ活」との違いを含めて確認していきます。
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(1)兄活とは?
兄活とは、女性側からみて「兄」と呼ぶ程度の年齢差の男性が、女性に対価を支払って食事やデートなどの同伴を求める行為を指します。食事・デート・ドライブなどの同伴のみというのが原則ですが、双方の合意があれば性的な行為に及ぶケースもあるようです。
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(2)兄活とパパ活の違い
兄活と「パパ活」の間に明確な違いはありません。
いわゆるパパ活とは、若い女性が父親程度の年齢差がある男性とデートなどに応じて対価を得る行為であり、行為そのものは兄活と同じです。
ただし、パパ活が「父親と娘」ほどの年齢差であるのに対して、兄活は「兄と妹」くらいの年齢差しかないため、女性側の抵抗感が低いといわれています。また、パパ活よりも比較的対価が低いとされています。
とはいえ、年齢差や対価で区別するというルールはないので、兄活とパパ活は「同じもの」だと考えておけば差し支えないでしょう。
2、兄活で男性側が逮捕される可能性が高い行為と刑罰
男性側は、兄活で出会った女性とデートなどして疑似恋気分を味わえることから、距離感も近くなり、一線を超えて犯罪行為に及ぶケースも多く見られます。では、どのような行為があるとどんな罪に問われるのでしょうか?
典型的なケースと適用される罪名、刑罰の重さを確認していきます。
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(1)女性に無理やりキスをした|不同意わいせつ罪
女性の承諾を得ず、あるいは拒絶されているのにもかかわらず無理やりキスをした場合などは、刑法第176条の不同意わいせつ罪が成立します。
本罪はもともと強制わいせつ罪という罪名でしたが、令和5年7月から、不同意わいせつ罪という罪名に変わり、様々な行為が刑罰の対象になることが明示されました。
具体的には、以下の行為が、不同意わいせつ罪に当たります(兄活にかかる部分に簡略化しています)。①~⑧に掲げる行為又は事由により、同意しない意思を形成・表明することが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の拘禁刑に処する。
- ① 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと
- ② 心身の障害を生じさせること又はそれがあること
- ③ アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること
- ④ 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること
- ⑤ 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと
- ⑥ 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、もしくは驚愕させること、又はその事態に直面して恐怖し、もしくは驚愕していること
- ⑦ 略
- ⑧ 略
「わいせつな行為」といえば、胸や陰部を触ったり、衣服を脱がせたりする行為を想像する方が多いかもしれませんが、通常、恋人同士などの関係でもなければ、無理やりキスをされることには性的に強い嫌悪を感じるでしょうから、わいせつな行為となります。
また①の「暴行若しくは脅迫」とありますが、殴る・蹴るなどの暴力行為や具体的な脅しがなくても、相手の意に反する程度であれば足りると考えるのが通説です。
さらに、相手が16歳未満であれば、仮に相手が同意していても、わいせつな行為をすれば、原則、不同意わいせつ罪となります。 -
(2)強引に性交した|強制性交等罪
相手が抵抗しているのに強引に性交に及んだ場合などは、刑法第177条の「不同意性交等罪」に問われます。
不同意わいせつ罪の「わいせつな行為」を、「性交、肛門性交、口腔性交、膣又は肛門に身体の一部や物を挿入する行為」に置き換えたものです。
不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑です。
有罪判決を受けると原則として執行猶予もつかず、実刑が言い渡されて刑務所へと収監されてしまいます。 -
(3)18歳未満の女性とお金を支払って性交した|児童買春禁止法違反
18歳未満の女性にお金を支払って性交や性交類似行為に及んだ場合は、児童買春禁止法第4条の違反となります。本条の違反は「児童買春」と呼ばれる行為で、罰則は5年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
双方に同意があったとしても、対価の支払いや支払いの約束があったうえで性交などに及べば違反なので「食事をおごることを条件に性交した」といったケースも罪を問われます。 -
(4)18歳未満の女性を深夜にわたって連れまわした|青少年保護育成条例違反
わいせつな行為や性交などの関係がなくても、18歳未満の女性を深夜にわたって連れまわしていると「青少年保護育成条例」の違反となるので注意が必要です。
香川県には「香川県青少年保護育成条例」が定められており、第15条に深夜外出の制限が設けられています。
午後11時から翌日午前4時までの深夜帯に、保護者から頼まれた、あるいは承諾を受けたといった事実もないのに18歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、とどめてはいけません。兄活の男性が女性側の保護者から承諾を受けることはまず考えられないので、食事やドライブ、カラオケなどを楽しむだけでも深夜帯に及べば違反になります。
香川県における罰則は10万円以下の罰金です。懲役や禁錮の規定はないので刑務所へは収監されませんが、罰金でも前科がついてしまうという点は心得ておくべきでしょう。
3、事件が発覚するきっかけは? 逮捕される可能性と逮捕後の流れ
兄活は、男女が双方合意のもとで成立する行為です。基本的には表ざたにならないものですが、ここで挙げるような状況があると警察に発覚してしまうおそれがあります。
事件が発覚するきっかけや、逮捕の可能性、逮捕後の流れをみていきましょう。
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(1)女性とトラブルになった
無理やりわいせつな行為に及んだ、謝礼・報酬といったお金の支払いや条件で「約束と違う」ともめたなどのトラブルになった場合は、女性が警察に通報・相談するかもしれません。
女性側にも後ろめたい面があるから通報されないだろうと考えるのは危険です。兄活をしている女性の多くは、兄活を合法、あるいは法的にグレーゾーンだと考えているので、たとえ自身にも非があるとしても「自分は被害者だ」という立場を強調するケースがあるので、トラブルに発展すれば警察に発覚する可能性が高まると考えておきましょう。 -
(2)女性の親や友人などにバレて通報された
スマホの履歴から女性の親にバレた、街を一緒に歩いていたところを女性の友人に見られてしまったなど、周囲の人が通報して発覚するケースも考えられます。通報を受けて駆け付けた警察官から事情を尋ねられ、深夜に無断で連れまわしているなどの事実から事件化されてしまうかもしれません。
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(3)別の事件の捜査から発覚した
女性が別件の兄活やパパ活で犯罪被害を受けて警察に相談し、ほかにも同様の被害がないかを警察が捜査するなかで、SNSのメッセージ履歴などから発覚する危険もあります。また、女性自身が兄活・パパ活の相手をだましたり脅したりして摘発され、証拠としてスマホの解析が進められるなかで発覚するケースもめずらしくありません。
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(4)逮捕の危険度と逮捕後に起きること
警察に事件が発覚すると、まずは秘密裏に捜査が進められます。
兄活に関係する犯罪は、主にわいせつ犯罪や児童・青少年を対象とした性的な犯罪で、厳しい刑罰が規定されているものが多いのが特徴です。重責をおそれて逃亡・証拠隠滅を図るおそれが強いと判断されやすいので、警察が逮捕に踏み切る危険は高いといえるでしょう。
警察に逮捕されると、警察の段階で48時間以内、検察官の段階で24時間以内、合計72時間の身柄拘束を受けます。
さらに、検察官の請求によって「勾留」が決定すると、初回で10日間、延長請求でさらに10日間以内、合計で最長20日間にわたって身柄拘束が続くので、逮捕から数えると合計23日間も自宅に帰してもらえません。
もちろん、仕事や学校にも行けず、家族や友人とも連絡が取れないので、社会的に大きな不利益を被ることになるでしょう。
検察官が「起訴」に踏み切れば、刑事裁判が開かれます。ドラマや映画などフィクションの世界では、犯罪の証拠を覆す劇的な展開で無罪判決を得るといったシーンが描かれることがありますが、現実にはそのような展開は期待できないでしょう。
日本の刑事司法制度では、証拠が明らかな事件を厳選して検察官が起訴しているので、起訴されてしまうと99%以上に有罪判決が言い渡され、刑罰が科せられます。
4、兄活でトラブルになったら弁護士に相談を
兄活でトラブルに発展してしまうと、警察に発覚して罪を問われる危険があります。穏便に解決したいと望むなら、弁護士に相談して解決に向けたサポートを依頼しましょう。
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(1)被害者との示談交渉を任せられる
兄活にまつわるトラブルを穏便に解決するために最も有効なのが、被害者との「示談」です。示談では、被害者側と加害者側が直接話し合い、合意を得て、解決をはかります。
具体的には、わいせつ行為などをはたらいたことについて真摯(しんし)に謝罪し、精神的苦痛への慰謝料などを含めた示談金を支払うことで許しを請い、被害届や刑事告訴の取り下げを求めます。
早い段階で被害者との示談が成立すれば、そもそも警察への発覚自体を回避できる可能性もあるので、素早い示談交渉が欠かせません。とはいえ、わいせつ犯罪などの被害者は加害者に対して強い怒りや嫌悪を感じているケースが多いうえに、相手が18歳未満なら交渉相手は本人ではなく保護者になります。
強い非難にさらされたり、謝罪を述べたいと申し向けても相手にしてもらえなかったりすることもめずらしくないので、交渉は容易ではないでしょう。円滑な示談交渉を進めるには、公平な第三者として厚く信頼される弁護士が代理人を務めるのが最善といえます。 -
(2)逮捕や刑罰を回避するための弁護活動が期待できる
すでに刑事事件として警察が認知している状況だと、逮捕や厳しい刑罰の回避に向けた対策が必要です。
弁護士に対応を任せれば、警察に対して、逃亡や証拠隠滅のおそれを否定し逮捕を伴わない在宅事件としての処理を求める、逮捕された場合は早期釈放を求めるといった弁護活動が期待できます。
また、不起訴処分を目指した検察官へのはたらきかけ、刑罰の軽減に向けた裁判官へのはたらきかけも期待できるので、できるだけ処分を軽くしたいと望むなら弁護士のサポートは欠かせません。
お問い合わせください。
5、まとめ
「兄活」は、それ自体が合法とは断言できないグレーゾーンにある行為です。
しかし、性的な関係を求めれば犯罪になる危険が高いうえに、ルールを守って食事・デートなどを楽しんだだけでも条例違反になることもあるなど、男性にとって重大なリスクを伴うものだと心得ておかなければなりません。
兄活について刑事事件に発展した場合は、ただちに弁護士に相談してサポートを求めましょう。逮捕や厳しい刑罰を回避するためには、弁護士のアドバイスは重要です。
ベリーベスト法律事務所 高松オフィスには刑事事件の解決実績をもつ弁護士が在籍しています。被害者との示談交渉や捜査機関・裁判官へのはたらきかけなどの弁護活動によって、穏便な解決に向けたサポートを尽くします。
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