不倫相手が未成年だった場合でも慰謝料請求は可能? 弁護士が解説
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配偶者の不倫相手が未成年者であった場合には、成年の不倫相手に対する慰謝料請求とは異なる配慮が必要になってきます。
不倫相手が未成年者である場合の特殊性をしっかりと押さえておくことによって、慰謝料を回収することができる可能性も高くなります。
今回は、不倫相手が未成年であった場合の慰謝料請求について、ベリーベスト法律事務所 高松オフィスの弁護士が解説します。
1、不倫相手が未成年の場合の慰謝料請求
不倫相手が未成年であった場合でも慰謝料請求は可能なのでしょうか。
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(1)未成年相手でも慰謝料の請求は可能
不倫相手が未成年だった場合には、慰謝料請求ができないと考えて慰謝料請求を諦めてしまう方もいるかもれしれません。しかし、不倫相手が未成年だったとしても、不倫相手の年齢によっては、法律上慰謝料請求が可能な場合もあります。
不倫慰謝料は、民法上の不法行為に基づいて請求していくことになりますが、不法行為に基づく責任を負うためには、その人の「責任能力」が必要です。
責任能力とは、その行為を弁識するに足りる能力のことで、簡単にいえば物事の善悪を判断できる程度の能力をいい、一般的には11歳程度の年齢で責任能力が認められます。
肉体関係を持つことができる程度の年齢であれば、通常は責任能力も備わっているといえるため、ほとんどのケースでは、未成年が不倫相手であっても慰謝料請求は可能だといえます。 -
(2)未成年の親への請求は自発的なものでないと難しい
不倫相手が未成年であった場合には、その親が責任を負うべきだと考える方もいるかもしれませんが、不倫をした未成年者に責任能力が認められる場合には、未成年者本人に不倫慰謝料の支払い義務が生じますので、不倫相手の親に法的な責任は生じません。
未成年の親が自発的に慰謝料の支払いに応じてくれるのであれば良いですが、そうでない場合には、未成年の親に対して、不倫慰謝料を請求していくことは難しいといえます。
2、未成年の不倫相手に慰謝料を請求する場合の注意点
未成年の不倫相手に慰謝料請求をする場合には、以下の点に注意が必要です。
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(1)支払い能力がなく、回収できない可能性がある
不倫相手が未成年の場合、まだ学生であったり、アルバイト程度の収入しかなかったりすることが多いケースが考えられます。不倫慰謝料額は、事案によっても異なりますが、100万円から200万円程度の金額になることもありますので、未成年者が一括で支払うのは難しいでしょう。
未成年者が不倫相手である場合には、未成年者の資力によっては、不倫慰謝料を回収できない可能性があることを覚えておくと良いでしょう。 -
(2)示談が成立しても親に取り消される可能性がある
未成年者との間で示談を成立させる場合にも注意が必要です。
民法では、未成年者が法律行為をする場合には、未成年者の親権者の同意が必要となり、親権者の同意なく未成年者が法律行為をした場合には、後日その法律行為が取り消されてしまう可能性があります。
未成年者との間の示談も法律行為の一種になりますので、示談を成立させる場合には、未成年者本人との間だけではなく、未成年者の親も含めて話し合いをする必要があります。
なお、これまでは、未成年とは20歳未満を指していましたが、民法改正によって令和4年4月1日以降からは18歳未満が未成年として扱われます。
3、配偶者が未成年と不倫していた場合のリスク
慰謝料請求を行う前に、配偶者が未成年者と不倫をしていた場合には、以下のようなリスクがあることを知っておきましょう。
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(1)配偶者が罪に問われる可能性がある
不倫をしていた配偶者は、慰謝料請求という民事上の責任を負いますが、不倫相手が未成年だった際には、以下のような刑事上の責任を負う可能性があります。
① 青少年保護育成条例違反
18歳未満の青少年との間で、みだらな性交または性交類似行為をした場合には、青少年保護育成条例違反にあたります。「青少年保護育成条例」は、各都道府県が制定している条例で、香川県には香川県青少年保護育成条例が存在しています。
香川県青少年保護育成条例に違反した場合には、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
② 児童福祉法違反
18歳未満の児童との間で淫行をした場合には、児童福祉法違反となります。ここでいう淫行とは、児童の心身の健全な育成を阻害するおそれのある性交または性交類似行為を指し、親や教師など、指導的な立場を利用した淫行が対象となります。
児童福祉法に違反した場合には、10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらが併科されます。
③ 児童買春・児童ポルノ禁止法違反
18歳未満の児童との間で、お金などの対価を支払って性交または性交類似行為をした場合は、児童買春・児童ポルノ禁止法違反にあたり、5年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
④ 強制性交等罪
13歳以上の児童に対して、暴行・脅迫を用いて性交をすれば強制性交等罪が成立します(刑法177条)。また、13歳未満の児童に対しては、暴行・脅迫が要件とはなっていません。
そのため、同意があったとしても、性交をした場合には強制性交等罪が成立し、5年以上の懲役に処せられます。 -
(2)配偶者が未成年の親から慰謝料を請求される可能性がある
判断能力が未熟であることに乗じて、未成年者と不倫を行った場合には、未成年者の人格形成に対して大きな打撃を与えることになるため、上記の刑事上の責任だけではなく、民事上の不法行為責任を負う可能性があります。
未成年者は、不倫相手として不倫慰謝料の支払い義務を負うことになる反面で、不倫をした配偶者からだまされた被害者として、慰謝料請求をできる地位も有しています。そのため、未成年者の親から慰謝料請求される可能性もあります。
4、未成年の不倫相手に慰謝料を請求する方法
未成年の不倫相手に対して慰謝料を請求する場合の方法を確認していきます。
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(1)示談交渉から始める
不倫慰謝料の請求をする場合には、まずは、相手との話し合いをすることから始めます。話し合いでは、不倫相手が関係を否定する可能性もありますので、不倫関係であったことを証明できる証拠を集めてから、話し合いを始めるようにしましょう。
不倫の証拠になるものとして、以下のようなものが挙げられます。- 不倫相手との写真
- 肉体関係があったことを匂わすようなLINEやメール
- クレジットカードの利用明細やレシート
- 録音や撮影したデータ
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(2)相手の親に連帯保証人になってもらう
話し合いの結果、相手が慰謝料の支払いに応じる場合には、示談書の作成を行います。未成年者との間で示談をする場合には、親権者の同意がなければ後日支払いを拒否される可能性もありますので、示談書には未成年者の親の署名・押印も必要です。
また、不倫慰謝料を一括で支払える資力がない場合は、慰謝料の支払いを分割払いにすることもあります。長期の分割払いでの示談は、将来不払いが生じるリスクが高くなりますので、可能であれば未成年の親に連帯保証人になってもらうと良いでしょう。
ただし、未成年の親であっても連帯保証人になる法的義務はありませんので、連帯保証人にすることができるのは、未成年の親が自発的に応じている場合に限られます。 -
(3)相手の親に立て替えてもらう
未成年者本人による分割払いでは、支払いが滞るリスクもありますので、話し合いの際には、未成年者の親から不倫慰謝料を立替えてもらい、一括で支払ってもらえるよう交渉することも検討してみてください。
未成年者の親としても、この先も支払いが終わるまで関わり続けるよりも、一括払いをして関係を切ることにメリットがあると感じる可能性もあります。
また、支払いを受ける側としても、支払いの遅延や未払いなどの将来的なリスクは低くなるというメリットもあります。
お問い合わせください。
5、配偶者に慰謝料を全額請求することはできる?
不貞行為があった場合には、不倫をした配偶者と不倫相手の双方が被害者の権利を侵害していることになり、法律上、共同不法行為にあたります。そのため、不倫をした配偶者と不倫相手の双方に不倫慰謝料を請求することも、どちらか一方に対して不倫慰謝料を全額請求することも可能です。
ただし、双方に請求できるといっても、2倍の金額を請求できるわけではありません。たとえば、適正な慰謝料の金額が100万円であった場合には、不倫をした配偶者と不倫相手のどちらに対しても100万円を請求することができますが、どちらか一方から100万円の支払いを受けた場合には、もう一方に対して慰謝料を請求することはできません。
なお、不倫慰謝料には負担割合という考えもありますが、それは慰謝料の支払い義務を負う者同士間の求償権の問題であり、慰謝料を請求する側としては特に考慮する必要はありません。
6、まとめ
配偶者の不倫相手が未成年であった場合でも、法的には不倫慰謝料を請求することは可能です。しかし、未成年だった場合、慰謝料の支払いに応じる資力がないケースや、示談にあたって親権者の同意が必要であるなど、成年であった場合とは異なる対応が求められます。
配偶者の不倫による慰謝料請求をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 高松オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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