親権と監護権の違いとは? 取り決め方法と注意点

2022年08月18日
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親権と監護権の違いとは? 取り決め方法と注意点

香川県が公表している人口動態に関する統計資料によると、令和元年の香川県内の離婚数は1674件で、離婚率(人口千対)は1.75でした。また、市町村別でみると高松市内の離婚件数が809件で、離婚率(人口千対)は1.93とされています。この統計からは、高松市が香川県内の離婚件数の約半数を占めており、離婚率も高いことがわかります。

子どもがいる夫婦の場合、離婚後にどちらが子どもの親権を取得するのか決めなければなりません。このとき、「親権と監護権を分けるのはどうか」と提案されることもあるでしょう。

そもそも、親権と監護権にはどのような違いがあり、それぞれ分けることでどのような影響があるのでしょうか。今回は、親権と監護権の違いや権利を分ける際の注意点、取り決め方法について、ベリーベスト法律事務所 高松オフィスの弁護士が解説します。


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1、親権と監護権の違い

親権と監護権では、どのような違いがあるのでしょうか。

  1. (1)親権とは

    親権とは、親が子どもを監護・教育し、子どもの財産を管理する権利および義務のことをいいます。

    未成年である子どもは判断能力が不十分であるため、子どもが不利益を被ることのないように、親が身分上・財産上の権利を行使するのです。

    婚姻中の夫婦の場合、親権は共同で行使しますが、離婚する際には、どちらか一方を親権者と定めなければなりません。

    なお、親権には以下のような権利が含まれています。

    ① 身上監護権
    身上監護権とは、親が子どもの監護・教育をする権利・義務を指し、身上監護権には、以下の権利が含まれています。

    • 身分行為の代理権
    • 居所指定権
    • 懲戒権
    • 職業許可権


    ② 財産管理権
    財産管理権とは、親が子どもの財産管理や財産に関する法律行為を代わりに行う権利で、財産管理権には、以下の権利が含まれています。

    • 包括的な財産管理権
    • 財産的法律行為に対する同意権


  2. (2)監護権とは

    監護権とは、親権に含まれている身上監護権のみを取り出したものをいいます。

    一般的には、親権と監護権はセットで扱われますので、親権者と指定された親が子どもに対する監護権も行使することになります。
    その結果、親権者が子どもと一緒に生活できるため、親権争いが生じるのです。

    しかし、経済基盤が整っている父親が親権を得ても、幼い子どもの世話をするのは難しい、というように、親権者が監護権を行使するのが適していないこともあります。

    そのような場合には、親権から監護権を分離して親権者と監護権者を別々に指定することも可能です。

    親権者と監護権者を分けた場合、親権者ではなく監護権者と指定された親が子どもと一緒に生活することになります

2、権利を分けたい場合の注意点

先述のとおり、一般的に親権と監護権はセットで行使するのが望ましいと考えられています。それはなぜなのでしょうか。

親権と監護権を分けた場合、生じえるトラブルや注意したいポイントについて、確認しておきましょう。

  1. (1)戸籍上、監護権が明記されない

    子どもの親権者を定めると、子どもの戸籍の身分事項には親権者が記載されます。
    親権者は子どもの戸籍謄本を取得することによって、親権者であることを証明することが可能です。

    しかし、親権と監護権を分離したとしても、戸籍上に監護権が記載されることはありません。そのため、監護権者は、自分に子どもの監護権があることを客観的に証明することはできないのです。

    たとえば、親権者と監護権者がトラブルになり、親権者が「(監護権者に)子どもを誘拐された」と警察に訴えたとしましょう。

    当然、監護権者は自分に監護権があることを主張しますが、戸籍に記載がないため、証明することが難しくなってしまいます。

    このようなトラブルを避けるため、親権と監護権を分離するときには、離婚協議書などの書面で、親権と監護権を分離していると明記しておくことが大切です

  2. (2)重要な判断をスムーズに行えない

    先述のとおり、親権者は子どもの法律行為を代行したり、子どもの財産を管理したりする権利および義務を有しています。

    そのため、監護親との生活中にこれらの権利・義務を行使するべきトラブルが子どもに生じたとき、たとえ緊急の事態だったとしても、親権者から同意を得たり手続きをしてもらったりしなくてはなりません

    このように、子どもにとって重要な判断をする際には、子どもと別々に暮らす親権者の同意が必要になるため、意思決定をスムーズに行うことができない可能性があります。

  3. (3)監護権者の再婚相手と子どもの養子縁組に親権者の同意が必要

    離婚後に、監護権者が再婚するということもあるでしょう。

    再婚するにあたって、再婚相手と子どもとの間で養子縁組を行いたいとき、子どもが15歳未満の場合には親権者の同意が必要になってきます。

    親権者としては、感情的な理由から、再婚相手との養子縁組を拒否することのないように注意が必要です。

  4. (4)親権者だからといって面会交流ができるわけではない

    親権と監護権を分離して、親権を取得した親としては、離婚後も変わらず子どもと面会ができると期待する方が多いでしょう。

    しかし、親権者であっても当然に面会交流ができるわけではありません。面会交流について、別途取り決めをする必要があります。

    子どもとの面会交流を希望する場合は、離婚前に十分な協議を行い、離婚協議書を作る際に父母間で面会交流についてしっかりとルールを定めましょう。

    ただし、取り決めをしていたとしても、面会交流を行うことで子どもの精神や情緒を不安定にしたり、子どもの発育に悪影響を及したりする場合には、面会交流は認められないこともあるため、注意が必要です。

3、親権・監護権を定める方法

親権・監護権を定める場合には、以下のような方法で行います。

  1. (1)夫婦の話し合い

    子どもが未成年の場合、離婚の際に親権者をどちらにするかを必ず指定しなければなりません。
    そのため、まずは離婚協議などでどちらが親権者になるかを話し合うことになります。

    親権と監護権を分離するという選択でも、父母の話し合いによって決めることが可能です。

    ただし、親権と監護権を分離する場合には、先ほど解説したような注意点がありますので、親の都合だけでなく、子どもにとって何が1番よいことなのか検討する必要があります

    なお、親権者の指定と異なり、監護権者の指定は、離婚時に必ず必要なものではありませんので、離婚後に親権と監護権を分離することも可能です。

  2. (2)調停

    父母間の話し合いで親権・監護権が決まらなかった場合、家庭裁判所に調停の申し立てを行うことになります。

    離婚前であれば夫婦関係調整調停(いわゆる離婚調停)、離婚後であれば親権者変更調停や監護者の指定調停などの申し立てを行います。

    調停では、親権者・監護者の指定を希望する事情、これまでの養育状況、家庭環境、子どもの年齢、性格、性別、生活環境などの事情を考慮して、子どもの福祉の観点から適切な取り決めができるように話し合いが進められます。

    調停で話し合い、双方の同意が得られた場合は成立となりますが、どちらか一方が反対している場合、調停は不成立となってしまいます。

  3. (3)審判・裁判

    離婚調停が不成立になった場合、離婚裁判を起こし、離婚とともに親権者・監護権者について裁判官に判断してもらうことになります。

    また、親権者変更調停や監護者の指定調停が不成立になった場合には、自動的に審判の手続きに移行し、審判も裁判と同様に、裁判官が親権者・監護権者を判断します。

    なお、裁判実務では、親権と監護権は一致することが望ましいとされているため、分離しなければならない特別な事情がない限りは、どちらの権利もセットで判断されます。

    そのため、親権と監護権の分離を考えている方は、話し合いや調停での解決を目指すようにするとよいでしょう。

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4、離婚問題は弁護士へ相談を

親権や監護権を含む離婚問題でお悩みの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)親権と監護権を分離するケースでも適切な対応が可能

    親権と監護権は、基本的には一致するものと考えられていますので、親権と監護権を分けるという扱いは例外的なケースになります。

    そのため、相手に対して、親権と監護権の分離をしたいと伝えても、そのメリットとデメリットについて理解してもらえないということも少なくありません。

    弁護士であれば、法律の専門家としての立場から、親権と監護権の内容や親権と監護権を分離することのメリット・デメリットを丁寧に説明することによって、相手に理解してもらえる可能性が高まります

    本人では対応が難しいケースであっても、弁護士に依頼をすることによってスムーズに話し合いが進むことが期待できます。

  2. (2)不利な離婚条件にならないようにサポート

    離婚にあたっては、親権・監護権の他にも、養育費、財産分与、慰謝料などの取り決めをしなければなりません。

    特に、子どもと一緒に生活をすることができない非監護親としては、離婚後の面会交流の取り決めが大切です。

    弁護士は、依頼人が希望する条件で離婚を成立させられるように交渉を進め、話し合いが難航した場合は、家庭裁判所の調停、審判、裁判などの法的手段によって解決を目指します。

5、まとめ

親権と監護権を分離することによって、非監護親であっても親権者となり子どもとの接点を持つことができます。

しかし、親権と監護権を分離する場合には、さまざまなデメリットがありますので、子どもの福祉にも配慮して慎重に判断しなくてはなりません

親権と監護権をどのようにするのがよいか迷われる方は、まずは弁護士に相談をするとよいでしょう。
離婚に関する問題は、ベリーベスト法律事務所 高松オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています