別居10年以上の夫婦が離婚する場合の財産分与|注意点と進め方
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別居期間が10年以上ある夫婦が離婚する場合、いつまでの財産が財産分与の対象となるのでしょうか。また別居中に財産の増減があった場合、どのように財産を評価すればよいのでしょうか。
この記事では、財産分与の対象となる財産の種類や、財産評価の基準時とあわせて、財産分与を行う手順などについても、ベリーベスト法律事務所 高松オフィスの弁護士が解説していきます。
離婚を検討しており、別居期間が長期におよぶ方はぜひ参考にしてください。
1、そもそも財産分与とは
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(1)財産分与とは?
「財産分与」とは、離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる権利です。
財産分与の目的は、夫婦が婚姻期間中に協力して蓄えた財産を実質的に公平になるように分配し、離婚後の生活維持を図るというものです。そのため、夫婦が離婚する際には財産分与によって夫婦財産を清算することができます。
財産分与には、夫婦財産の清算、離婚後の生活を立て直すための生活の保障、また離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質もあります。 -
(2)財産分与の対象となる財産とは?
財産分与では、夫婦のいずれか一方の名義になっている財産でも、実際には夫婦の協力によって形成されたものであれば、財産分与の対象となります。
以下のような財産については夫婦共有財産として財産分与の対象になる可能性があります。- 婚姻中に購入し夫の単独名義になっている土地・建物
- 夫婦の一方の名義になっている預貯金、現金
- 自動車、家電、家具
- 保険解約返戻金
- 年金
- 退職金
2、別居10年以上の夫婦が離婚する際の財産分与の注意点
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(1)別居時の財産が対象となる
夫婦が離婚する前に10年以上別居していた場合、財産分与の対象となるのは「別居時(別居を開始した時)」に存在していた財産のみとなります。夫婦が別居した後は、通常夫婦の協力関係は失われたと考えられるからです。
それでは、別居前にすでに「家庭内別居」をしていたという場合はどうなるのでしょうか。
この場合はケース・バイ・ケースの判断となりますが、実務的には家庭内別居は財産分与の基準時となる「別居」とはいえない、と判断される可能性が高いでしょう。
家庭内別居というと、会話や夫婦生活が一切なく、食事も寝室も別々のような状態が多いでしょう。このような状態であっても、同居して生活している以上、住居費・水道光熱費、生活雑費にかかる費用は共同して支出していると評価でき、夫婦の間に協力関係が残存していると評価できることになります。 -
(2)財産の評価は離婚時点の評価となる
分与財産の評価は「離婚した時点」を基準にします。
たとえば、株式や有価証券などの共有財産であれば、別居から10年で価格や価値が大きく変動する可能性があります。
具体的には、夫婦が協力して購入して夫の単独名義で保有している株式があった場合、「別居時点では100万円」であったものの、その後価値が高騰し「離婚時点では200万円」となっていた場合、この株式は財産分与の対象となり、離婚時を基準に評価することになるため、「200万円」とされます。
実際、離婚時に株式や有価証券を分与する場合、離婚調停成立直前や、離婚判決の直前に提出された資料に基づいて株価を評価することが一般的です。
退職金については、別居時点の退職金見込み額をベースに離婚時に判断することになります。生命保険や学資保険については、別居時点の解約返戻金額をベースに離婚時に判断することになります。
なお、10年別居を継続していたとしても、現金や預貯金については評価基準時の問題はほとんど起こらないでしょう。
3、別居から10年以上……財産分与を行う手順とは
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(1)まずは夫婦間で協議する
別居期間中の夫婦が離婚をする場合、まずは話し合いの中で財産分与や慰謝料、養育費などの離婚条件を定めることになります(協議離婚)。
協議の中で財産分与を請求する場合には、財産目録などで分与対象となる夫婦共有財産をすべて特定し、それぞれの評価額を算出することになります。
財産目録を見ながら分配の割合についても合意で決めることができます。財産分与の分配割合について当事者間で合意が成立する場合には、自由にその合意に基づいて決定することができます。
このように話し合いで解決できる場合には、夫婦間でどの財産が誰の物になるのか、分けられる物をどのように分けるのか、を自由に決めることができるのです。 -
(2)まとまらない場合には調停・審判の申し立て
財産分与について当事者間での話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に調停の申し立てをして、財産分与を求めることができます(夫婦関係調整調停(離婚))。
調停手続きでは、家庭裁判所の裁判官や調停委員2名が、当事者双方から事情を聴取し、必要に応じて資料の提出を求めて解決案を提示したり、必要な助言をしたりして合意を目指して話し合いが進められることになります。
調停手続きで合意に達した場合には、その内容で調停調書が作成され手続きは終了します。なお、話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には審判手続き開始され、裁判官による判断が示されることになります。ただし、2週間以内に異議申し立てがなされた場合は、裁判による解決を求めることになります。 -
(3)最終的な手段は離婚裁判
調停・審判によっても解決できなかった場合には、離婚裁判を提起する必要があります。
訴訟提起した場合、口頭弁論期日が指定され、当事者双方が証拠に基づいて事実を主張・立証することになります。必要な証拠の取り調べが行われ、最終的には裁判官が離婚の可否、財産分与について判決をもって判断することになります。
なお、訴訟が提起されたとしても、当事者は適宜話し合いによる解決をすることは可能です。訴訟中に話し合いがまとまった場合には、裁判上の和解によって手続きが終了させることもできます。
4、長期間の別居後の離婚問題は弁護士に相談を
10年以上など長期間の別居を経て離婚を検討している方は、離婚問題の解決実績がある弁護士に相談することをおすすめします。
上述のとおり、財産分与をするためには、現金・預貯金、不動産、自動車、家財道具、株式・有価証券など一切の共有財産を洗い出し算定する必要があります。弁護士に依頼することで、財産の特定と適切な請求を行えます。また、婚姻費用や養育費などの調整、離婚手続きについても弁護士にすべて任せることができます。
弁護士に相談することで、スムーズに交渉・手続きが進められ、ご自身だけでは思いつかなかったような解決策やアドバイスを受けられる可能性も高いでしょう。
5、まとめ
この記事では別居期間が長期におよぶ場合の財産分与について詳しく解説してきました。
財産分与は離婚後の生活に影響するため、適切な分与を行う必要があります。しかし、対象財産の調査や適切な請求は複雑であるため、不安な方は弁護士の助けを借りましょう。
ベリーベスト法律事務所 高松オフィスには離婚事件の経験がある弁護士が所属しています。財産分与はもちろん、さまざまな離婚手続きについても親身にサポートいたしますので、離婚についてお悩みの方は一度ご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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